糖質制限はダイエット法というより、新しい栄養学である

糖質制限は、一般的には、糖尿病の治療法、あるいはダイエット法として注目されています。

が、仕組みを知って私が強く感じたのは、「糖質制限は栄養学の新しい常識だ」ということです。

 

カロリー計算の疑問

今までの栄養学は、カロリー計算に基づいています。

1グラムあたり炭水化物4kcal、タンパク質4kcal、脂質9kcalというあれです。

脂質はもっともカロリーが大きく、ダイエットには脂っこいものは大敵とされています。

が、糖質制限をすれば誰でもわかるとおり、肉や揚げ物など、脂っこいものだけを食べても、まったくと言っていいほど太れません。

糖質制限をして実感するのは、「肉や脂質だけを食べて太るのは極めて困難」という明確な事実です。

可能性として考えられるのは、カロリーの算出方法に問題があるか、栄養学におけるカロリーの考え方がナンセンスか、どちらかです。

 

カロリー算出の根拠はエネルギー保存の法則

食物に含まれるカロリーの算出に使われているアトウォーター係数は、食物を空気中で燃やして得られた熱量と、同量の食物を食べて出た排泄物を燃やして得られた熱量の差から、食物から吸収した熱量を推定する方法です。

現在は消化吸収率を考慮した修正アトウォーター係数が広く使われているそうです。

一見すると、「空気中の燃焼」と「体内での代謝」を同列に考えていいものか疑問が浮かびますが、これはエネルギー保存の法則によって、説明できるようです。

生理的熱量 – Wikipedia

エネルギー保存の法則 – Wikipedia

 

問題は栄養学の考え方にある

カロリーの概念が妥当だとすれば、問題は栄養学の考え方にあります。

栄養学の問題点は、シンプルに言えば、

「100エネルギーの食品を食べると、50エネルギーの食品を食べるよりも太る」

と短絡的に考えてしまっている点にあるように思います。

言うまでもありませんが、カロリーが同等だったとしても、炭水化物とタンパク質と脂質では、体内での利用のされ方が違います。

エネルギー源となるものもあれば、体の構成要素になるものも、脂肪として蓄積されやすいものもあるわけです。

 

現在の栄養学は代謝を精密に考慮していない

炭水化物(糖質)は、脳の活動に必須なブドウ糖を供給しますが、余った分は中性脂肪に変わります。つまり体重増加に繋がりやすい食物です。

一方でタンパク質は筋肉などの構成・維持に、脂質は細胞膜の構成・維持やエネルギー源に使われるので、消費されやすい食物です。

現在主流の栄養学では、このような代謝の仕組みを精密に考慮していません。

でなければ、「脂質は高カロリーである。だから脂質を摂り過ぎると太る」などと、ナンセンスかつ明らかに事実に反する考え方をする理由はないはずです。

 

食物が基礎代謝に及ぼす強い影響

同時に、栄養学では、食物が基礎代謝に及ぼす影響も考慮していないようです。

炭水化物(糖質)は血糖値を上昇させ、そのままでは人体の害になるため、インスリンの大量分泌を招きます。

インスリンは、ブドウ糖を中性脂肪に変えて血糖値を下げるだけでなく、すでに体内にある脂肪の代謝を抑制します。

食事ごとにインスリンが大量に追加分泌されていれば、基礎代謝がどんどん落ち、ちょっとやそっとの運動では痩せにくい体になります。

結果として、炭水化物を主食として食べるのであれば、痩せるためには食事の量を大きく減らす必要に迫られます(いわゆるカロリー制限食)。

加えて、インスリンによって落ち込んでいる基礎代謝を向上させるために、それなりの強度の運動も必要です。まるで、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなものです。

 

糖質制限はダイエット法というより、新しい栄養学である

ダイエットにまったく関心がなかった私が、糖質制限のおもしろさにのめり込んでいる理由は、このように、「常識だと思っていた栄養学が、実は間違っているようだ」と気づいたからです。

それまで体重の増加に悩んだ経験がなかったのに、30歳を過ぎてからは、30分以上のジョギングを週1〜2回やってもちっとも痩せない。極端に食べ過ぎている感覚もない。

これはなにかおかしいぞ、と。

糖質制限の仕組みを知って、疑問が見事に氷解しました。

とはいえ、「脂っこいものを食べると太る」という古くさい栄養学のおかしさに気づかないのも、当然と言えば当然かもしれません。

脂を食べれば脂肪になる、というのは、感覚としては正しいように見えるからです。

が、これは実は、「人肉を食べるとその人の能力が手に入る」という理屈と大差ないわけです。

せめて、カロリー制限派の栄養士さんは、体重増加の中心的な原因が本当に脂質(あるいは高カロリー食)であるのか、検証する責任があると思います。

3 comments

  1. 奈良県吉野けんさん

    夏井先生のブログから来ました。 はじめまして
    カロリーに対して疑問があり 自分の身体でいろいろ模索中です。
    新しいカロリーの概念を考えていきたいと思います、宜しくお願いします。

    • はじめまして。コメントありがとうございます。
      糖質制限をしてみると、なんで今まで誰もカロリーを疑わなかったんだろうと驚きますよね。
      私も自分実験が好きで、いろいろと試してみています。
      今後ともよろしくお願いいたします。

  2. >「脂っこいものを食べると太る」という古くさい栄養学のおかしさに気づかないのも、当然と言えば当然かも>しれません。
    >
    >脂を食べれば脂肪になる、というのは、感覚としては正しいように見えるからです。
    >
    >が、これは実は、「人肉を食べるとその人の能力が手に入る」という理屈と大差ないわけです。

    初めまして佐々木ともうします。糖質制限を実践しています(必ずしも減量目的ではありません)。
    私も自分実験が好きです。
    上記の部分、比喩としてなるほどと思いました。日本語のネット環境では低水準な揶揄も多いでしょうがこのような有益なブログを運営なさっているのは、読者としては感謝しております。確かに栄養学は使い物にならなさすぎて呪術的ですらある部分もあります。脂肪摂取量が適切だと体脂肪がアンロックされて分解に向かうというのは不思議なことですが事実だと思います。

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