「動物性タンパク質の摂取量が多いと死亡率が75%増加」の研究結果をもって、糖質制限の危険を論じることはできない

週刊ポストのライター(記者?)を始めとして、南カリフォルニア大学長寿研究所の研究結果をもとに、糖質制限の危険性を論じるケースが散見される。

ダイエットに本当に有効な糖質・タンパク質・脂質の摂取割合│NEWSポストセブン

米学術誌『セル・メタボリズム』3月号には、南カリフォルニア大学長寿研究所の研究として、65歳以下の中年期に肉や、牛乳、チーズなどの動物性タンパク質の摂取量が多いと、摂取量が少ない人に比べて死亡率が75%増加し、がんで死ぬリスクが4倍になるという衝撃の結果が報告された。

 
65歳以下の中年期に、肉・牛乳・チーズなどの動物性タンパク質の摂取量が多いと、摂取量が少ない人に比べて死亡率が75%増加し、がんで死ぬリスクが4倍になるそうだ。

 
南カリフォルニア大学長寿研究所による研究の原典(英語)はこちらにある。
Low Protein Intake Is Associated with a Major Reduction in IGF-1, Cancer, and Overall Mortality in the 65 and Younger but Not Older Population: Cell Metabolism

 

糖質制限は完璧ではないが、今回は筋違いの指摘

私は個人的に、高タンパク質食になんのリスクもない、とは考えていない。

だから、高タンパク質食をことさら擁護するつもりはない。

ただ、上記の南カリフォルニア大学長寿研究所の研究結果をもって、糖質制限の危険性を論じるのは、ナンセンスだと考える。

そもそも違和感を覚えたのは、「高タンパク質食群で糖尿病リスクが高い」という研究結果データだ。

Among subjects with no diabetes at baseline, those in the high protein group had a 73-fold increase in risk (HR: 73.52; 95% CI: 4.47–1,209.70), while those in the moderate protein category had an almost 23-fold increase in the risk of diabetes mortality (HR: 22.93; 95% CI: 1.31–400.70).

※以下、引用はすべて「Low Protein Intake Is Associated with a Major Reduction in IGF-1, Cancer, and Overall Mortality in the 65 and Younger but Not Older Population: Cell Metabolism」より

タンパク質は血糖値を上げない。少なくとも、糖尿病の直接的な原因にはなり得ない。

糖尿病になるには、炭水化物の過剰摂取が必要だ。

そう考えて、研究の前提条件を調べてみると、

The percent of calorie intake from protein was used to categorize subjects into a high protein group (20% or more of calories from proteins), a moderate protein group (10%–19% of calories from proteins), and a low protein group (less than 10% of calories from proteins).

とあり、高タンパク質食群とは、カロリーの20%以上をタンパク質で摂取するグループを指しているとわかる。

On average, subjects consumed 1,823 calories, of which the majority came from carbohydrates (51%), followed by fat (33%) and protein (16%), with most of it (11%) derived from animal protein.

そして、平均的には、カロリーの51%を炭水化物で摂取しているという。

これでは、タンパク質の摂取割合が20%以上だろうが、19%以下だろうが、どちらも立派な高糖質食である。

 

当該研究は、高糖質食者間での比較でしかない

つまり、上記の研究結果が示しているのは、炭水化物を主食としている場合に、動物タンパク質の摂取量を増やすと、インスリン分泌または抵抗性になんらかの問題が発生し、糖尿病リスクが高まる、という事実だ。

しかしながら糖質制限者は、そもそも糖尿病の主要因となる糖質の摂取量が少なく、血糖値の上下動が穏やかになる(インスリン分泌が減少する)。

おそらく、糖質制限者グループで同様の研究を行えば、まったく別の結果が出るだろう。

ちょうど江部康二医師のブログで、ニューヨークメモリアルスローンケータリング癌センター・センター長兼CEOの講演動画が紹介されていた。

ドクター江部の糖尿病徒然日記  糖質摂取多いと癌のリスク。スローン・ケタリング癌センターCEOの講演。

「脂質を過剰摂取させてもガン発生率は全く増えません。炭水化物を過剰摂取させると、ガン発生率が劇的に増えます。タンパク質はその中間です」

「なので、炭水化物ベースの食事について大きな議論をすることになるでしょう・・・。」

 
重ねて言うが、南カリフォルニア大学長寿研究所の研究は、炭水化物を主食としているグループを対象としているものであり、これをもって糖質制限の危険を論じるのは、ナンセンスだ。

 

「危険」を独り歩きさせるなかれ

大前提として、南カリフォルニア大学長寿研究所の研究は「現状における長寿の最適解を探そう」という試みだ。

“現状” が根本的に過ちを犯しているとしたら、どんぐりの背比べでしかない、という点で、限界がある。

もっとも、糖質制限をすれば寿命が延びるかといったら、必ずしもそうとは限らない。低炭水化物・高タンパク質食が、発がんリスクを高めるという研究結果もあるようだ。

かといって、炭水化物の過剰摂取を続けていれば、肥満や糖尿病のリスクが高まる。

要するに、寿命を最適化する絶妙なバランスは、まだ見つかっていないということなのだろう。

また、長寿も度を超すと、何を差し置いても優先すべきなのか?という疑問も湧いてくる。

肥満や高血圧で投薬を受けながら80歳まで生きるよりも、すっきりとした健康体で75歳まで生きるほうがいい、という人もいるだろう。

研究の主旨や前提条件を無視して、一部だけを抜き出し、「危険だ」と騒ぐのはいかがものか。

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